直売所甲子園開催に寄せて
納口るり子(茨城県:筑波大学 生命環境科学研究科
生命環境科学研究科 国際地縁技術開発科学専攻
准教授 )
我が家の野菜は,茨城県内で新規参入して有機農業をやっている私のゼミの卒業生が、毎週1回届けてくれるものを購入しています。見栄えは立派ではなくても、時々、しみじみとおいしい野菜を食べることができます。新タマネギの味で感動したのは、彼の野菜が初めてでした。また、お米は、10年来のお付き合いのある石川県の農業法人から無農薬栽培のものを購入しています。というわけで、直売所で野菜やお米を買うことは多くはないのですが、ドライブ中、直売所を見かけると、季節の野菜や果物、手作りのお菓子などを必ずチェックします。職業意識もありますが、楽しみも半分です。
つくば市は直売所の多い街です。野菜作が盛んなのと、研究所や大学などに勤める都会人がお客さんとして直売所に立ち寄るからだと思います。これからの季節は、タケノコなども店頭に並びます。野菜は値段が手頃で、品種や味にバリエーションがあるため、直売所は消費者にとって手軽に買い物を楽しめる場所となっています。同時に生産者にとっては、自分で値段を付けて手軽に販売でき、農協の部会に入らない高齢の方などにとっては、とても有り難い販売ルートです。
日本全国の農家の動向を見ると、2000年には販売農家の3.6%しか、「店や消費者に直接販売」を行っていませんでしたが、2005年には16.5%が直接販売を行うようになりました。また、2000年には比較的大規模な農家の取り組みであった直売ですが、2005年になると全ての農家層に広がりました。そのため、直売と言っても、ピンからキリまでの色々な農産物が販売されるようになったと言えます。今回の直売所甲子園は、このような情勢を背景として行われます。
私は農業経営の研究者ですが、一消費者としても、「自分が買うんだったら」という視点で、楽しみつつも厳正に、審査を行いたいと思っています。
今の勢いは継続できるか

青山浩子
(東京都:農政ジャーナリスト)
月に1度ぐらいのペースで直売所を取材している。必ず尋ねる質問の一つが、「集客(売上げ)を伸ばすためにやっていることは?」――。責任者からよどみない答えが返ってくる。「生産履歴の提出を必須にして安全性を高めている」「定期的なイベントをやっている」など。近くのスーパーにインショップを設けたり、病院・学校に食材供給したりしている店も多い。直売所がミニ卸売市場の役割を果たしている。
もうひとつの質問が「出荷農家の高齢化が進んでいるが、彼らがリタイアした後の運営をどう考えているか」――。こっちになると責任者は言葉に詰まることが多い。「そこが課題なんですよ。他はどうやっていますか」と逆質問されることもたびたびだ。
現在、直売所への出荷を支えている中心は60〜80代だろう。地元に担い手がいないわけではないが、主業的な農家たちはJAや卸売市場に出荷したり、独自の販路を開拓してスーパーやレストランと直接取引をしたりしている。
直売所をのぞくと100円、80円、50円といった価格がついている。「安くて新鮮」と消費者から支持されている。だが、高齢農家や兼業農家らが支えているからこそ実現できる価格帯でもある。
いまの高齢農家がリタイアし、次の世代にうまくバトンタッチできたとしても、現在の価格帯では農業で生計を立てていくのは難しくないだろうか。黙っていては農家は減る一方だ。直売所として出荷農家をどう確保するか、価格帯を見直す必要があるのかどうか、将来にむけて解決すべき課題は多い。
数少ないが、こうした将来にむけた体制づくりに乗りだした直売所も存在する。ある直売所では、農業生産法人を立ち上げて若い社員を雇い、包装や加工などを高齢農家ができない業務を補いながら、効率化していくつもりだという。
いまの勢いを10年後、20年後も失わないために何をすべきか。そういう視点も持って、直売所の取材を続けていきたいと思っている。
「世界一の商品を作り、それを地元で売る」

◇直売所のどういうところが好きですか
私は出張が多いのですが、時間があれば必ず直売所には立ち寄ることにしています。そこで、ドカンと買い物をして、帰ってそれを開けるのが楽しみです。ただし、大好きなお漬物は朝食べたいので、たとえ電車の中で匂おうともバッグの隅に入れて持ち帰ります。犯人は私です、という感じかな。直売所の好きなところは季節感があり、五感で買い物が出来るところですね。食べ物は自分で見て選びたいから、直売所での買い物はとても楽しみです。そこには、流通のニーズで無理して加温して作ったものではなく、旬の野菜を生産者の都合で作ったものがたくさんあるからです。だから売場へ行くとワクワクしてきます。値段も東京のスーパーに比べたら、断然割安です。
◇買い物をしていて、これは問題だ!というところはありますか。
どの直売所でも加工品がよく売れているのですが、表示がいい加減なものが多いですね。アレルギー表示などもほとんどない。高知県の四万十の方でISOを取るぐらいのつもりでがんばっているところもありますが、それは本当にまれな事例でしょう。輪ゴムで袋の口を止めている漬物などを見るとギョッとします。規格を揃える以前に、法律を守るということ、食品には人の命がかかっているので、気を引き締めてもらいたい。直売所と甘えずに、きっちりとした「商品」にしなくてはいけません。
ひょっとして、売れているから「自分たちが作るのは、いい商品なのだ」と、勘違いしているのではないでしょうか?ほとんどの加工品は、この直売所だけで通用しているものです。おすそわけに近いものだ、ということをよく認識しなくてはいけません。
無邪気でかわいいのですが、継続して発展するにはこれでは物足りません。情報を世界中から集め世界一のモノを作って地元で売る。そのくらいの気概を持っていただきたい。
◇問題の解決に加えて、こうすれば直売所はさらによくなる、というヒントをお聞かせ下さい。
気になるのは従業員の態度ですね。ほとんどの直売所が無愛想で、サービス業としてはぜんぜんダメ。あんまり無愛想で、お客として傷つく時もあります。たぶん、話題になりやすいため、マスコミに甘やかされたりして、変な自信を持っているかも知れません。すごいすごいと回りに言われて、偉ぶってものを売っていた、二十年前の自然食品の店を思い出します。人の書いた文字に酔わず、慣れない事が大事です。また、直売所の関係者は、直売所ではなく百貨店、スーパー、専門店など、他の店のよさを知ってもらいたいものです。消費者は業態ではなく店で選んでいるのだから、隣の直売所ではなくさまざまな良い店を見ると、自分達の立ち位置が分かる。位置が分かれば、商品を深めること、広めることが自然とできるものなのです。
直売所には農産物を食品に変え、さらに販売する力があります。境界線を乗り越え、一流の店と勝負できる直売所に力を合わせ育てましょう。
(文責 青木隆夫)2009/04/05
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